SALT

日記

最近職場でよく白湯を飲む。常備されているポットのお湯をコップに注いで飲むだけ。インスタントコーヒーを過剰に摂取すると気持ち悪くなるし、かといってお茶を淹れるほどの根気もない。喉は渇くが冷たい飲料水なんかはトゥーマッチ。妥協と怠惰の末のポット白湯と言える。妥協と怠惰で白湯を語るなと白湯界隈の罵詈雑言を想像しながら、今日も明日も薄暗い給湯室でポットのロックを解除してヘコヘコと湯を注ぐ。

最近はマジで現場がやばく、しょっちゅう外にいる。ずさんな設計をスルーした同僚と上司に責任をおっかぶせても経験に物を言わせて殴り返されるだけなので、設計した過去の自分に粛々とブチ切れるしかない。一日のうちにだいたい二回くらいは呼び出され、三回は頭を下げ、十回は運を天に任せている。今の所は問題だらけだという点を除けば問題なくいっている。明日?そんな先のことはわからない。

そんな感じなので、白湯を注いでくだんねーメールを開封する儀でもやるかとパソコンに向かう暇もなくガラケーに着信が入り「水島くん、ここのコンクリートどうなってんの」と呼び出される。90℃のお湯が入ったコップをキーボードの横に置く。戻ってきたときに誰かがこぼしてパソコンが壊れていたら楽しいなと思うがそんなことは一度もない。現場から戻るとコップは元通りそこにある。しかし中に入っているのは白湯ではなくただの水になっている。

コップの中の液体はいつ白湯から水になったのだろう。ある時点までは白湯だったものが、急に水になったりはしないだろう。徐々に温度が下がり、体を温める白湯から元の水道水へと変化しているはずだ。それもはっきり50℃以下が水、それ以上はお湯ですよ、などといった線引きはされていない。人の胸先三寸でお湯かそうでないかが決定される。また、仮にコップの中にコーヒーが入っていれば、それは時間とともに冷めたコーヒーになる。冷めたコーヒーは顔をしかめながら飲むしかないが、白湯を経由した水道水は一切飲む気にならない。俺は流しに捨てるだろう。ただの水を。これが冷めたコーヒーを捨てるとなれば多少のもったいない気持ちもする。しかし水を流しに流すのは、食器を洗うのと何ら変わりがない。俺は食器を洗うかもしれなかった水を沸騰させてアツアツにした液体を好き好んで飲んでいることになる。なんだ白湯って?気持ち悪いな。助けてください。